入金サイクルと資金繰り課題医療機関や介護施設の経営では、診療報酬・介護報酬の入金タイミングに悩まされている方も多いのではないでしょうか。 たとえば、6月に提供したサービスの報酬が手元に入るのは8月中旬~下旬。 この1ヶ月半~2ヶ月の間、人件費や家賃、備品費などの運転資金を持ちこたえる必要があります。実際、令和5年度の介護事業経営実態調査では、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などの入所系サービスが平均で赤字に転落(▲1.0%)するなど、施設系を中心に経営の厳しさが顕在化しています。加えて、訪問看護や訪問リハビリなどの人件費率は軒並み70%を超えており、介護医療院では前年比+2.3ポイントの上昇と、人的コストの上昇も資金繰りを悪化する要因となっています。参考:厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要(案)」、厚生労働省「令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要」現在の経営環境においては、こうした資金ギャップをどう埋めるかが大きな課題となっており、状況に合った資金調達手段を見極め、適切なタイミングで活用する判断力が求められます。資金調達手段の比較資金調達と一口に言っても、方法は多岐にわたります。ここでは代表的な5つの手段を取り上げ、それぞれの特徴を比較してみましょう。資金調達手段資金化までのスピード審査負担担保・保証人の要否返済・償還要否返済・償還期間資金調達時のコスト負担備考銀行融資数週間~数ヶ月重い原則として必要返済が必要数年低~中(年利1~3%程度)安定した返済計画が必要ビジネスローン数日~1週間中程度原則として不要返済が必要数ヶ月~数年中~高(年利5~15%程度)迅速だが年利が高めリース数日~数週間中程度リース物件が担保になる契約に基づく支払いが必要契約期間中中(リース料に利息相当分を含む)設備資金向け補助金・助成金数ヶ月非常に重い不要原則として償還不要(※返還要件あり)償還不要なし(給付金扱い)審査・申請手続きが複雑請求書の現金化最短即日軽い原則として不要返済不要(債権譲渡型)返済不要高(売掛金の1~5%程度の手数料負担あり)資金繰り改善に有効ご覧の通り、「請求書の現金化」はスピードと手軽さにおいて際立っています。特に資金繰りに緊急性があるときには、有力な選択肢となります。請求書現金化の仕組みと会計処理請求書の現金化とは、取引先からまだ支払われていない請求書(未回収の売上)を金融機関や専門会社に売却し、手数料を差し引いた金額を受け取る資金調達方法です。一般的には「ファクタリング」と呼ばれています。 以下は、よく利用される「3者間ファクタリング」の流れを示した図です。利用者がファクタリング会社に対し、売掛債権を譲渡する旨を売掛先に通知します。ファクタリング会社は、債権の買取代金を利用者に支払います。支払期日になると、売掛先はファクタリング会社に直接売掛金を支払います。ファクタリングは「売掛債権の譲渡」にあたるため、帳簿上では借入金ではなく売掛金の消滅として処理されます。負債としての計上は不要で、借入による債務の増加を避けられます。医療・介護事業におけるファクタリングのメリットファクタリングは診療報酬や介護報酬と非常に相性が良く、安定した資金調達手段として多くの事業者に利用されています。診療報酬ファクタリング診療報酬は、回収不能のリスクが極めて低いため、ファクタリング会社から高く評価される傾向があります。その結果、手数料は一般業種よりも低く設定されやすく(1〜5%程度)、初期コストを抑えて資金調達することが可能です。特に開業間もない医療機関にとっては、融資と比べて柔軟かつスピーディに資金調達できる手段として有効に活用されています。介護報酬ファクタリング介護保険サービスや障害福祉サービスなどでは、国民健康保険団体連合会や市区町村への請求手続きが必要です。介護報酬ファクタリングでは、こうした特殊な請求フローや制度の違いに対応できる体制を持つ事業者も多く存在します。たとえば、国保連請求、自立支援給付、障害者総合支援法による請求など、制度横断的な債権でも資金化が可能です。日々の運転資金確保や人件費・家賃支払いの安定化に加え、サービスの継続性を守るための経営施策として導入する事業所も増えています。ケーススタディファクタリングは、業歴や信用状況にかかわらず、柔軟に資金調達ができる手段として活用されています。以下は、実際に医療機関で導入された事例の一つです。開所直後でもファクタリングでスムーズに資金調達ある障がい福祉サービスでは、新たな施設開所を目前に運転資金が不足し、資金調達の方法を模索していました。銀行融資では間に合わず、そこで活用したのが自立支援給付費のファクタリングでした。ファクタリング審査を申請したところ、申込から2営業日後には審査が通過。契約締結や請求書の確認などを経て、約2週間後には希望金額の満額である640万円が送金されました。この資金をもとに運営体制を維持できただけでなく、「次回請求タイミングまでの資金繰りにも余裕が生まれた」とのことです。参考:3度目の契約、その理由は“人”だったファクタリングに関するよくあるご質問よくお問い合わせいただく内容をQ&A形式でまとめました。導入前の疑問や不安の解消にお役立てください。Q. ファクタリングの審査基準は?A. 最も重視されるのは「売掛先の信用力」です。ファクタリングは売掛債権を譲渡する取引のため、利用者本人の財務状況よりも「売掛先(=診療報酬や介護報酬の支払元)が確実に支払ってくれるかどうか」が最大の審査ポイントです。また、売掛金の回収の確実性(支払い遅延や二重譲渡リスク)や、利用者自身の信頼性(過去の不正利用履歴や契約姿勢)なども確認されます。赤字決算や税金滞納がある場合でも、すぐに審査落ちになるとは限らず、銀行融資よりも柔軟な判断がなされることが多いのが特徴です。Q. どのような事業者がファクタリングを利用できますか?A. 医療法人、社会福祉法人、個人事業主など、さまざまな医療・介護事業者が利用できます。たとえば以下のような事業者で導入されるケースがあります:病院やクリニックを運営する医療法人通所介護や施設サービスを提供する社会福祉法人開業医や歯科医院などの個人事業主小規模な訪問介護・訪問看護事業所開設間もない新規事業所や、多店舗展開している法人 など事業形態よりも、「診療報酬や介護報酬などの請求債権があるかどうか」が判断のポイントとされます。そのため、業歴や規模にかかわらず、柔軟に対応される場合があります。Q. 請求金額の一部だけでも現金化できますか?A. はい、可能です。請求書1件の全額を資金化する必要はなく、必要な金額だけを資金化することができます。たとえば、人件費や家賃など特定の支出に合わせて金額を調整することで、資金繰りに応じた柔軟な活用が可能です。なお、診療報酬・介護報酬のファクタリングでは請求書の8割を資金化する方法が一般的です。Q. 開業して間もないのですが、申込みできますか?A. 状況によってはご利用いただける場合があります。ファクタリングは、銀行融資と比べて審査が柔軟な場合が多く、開業初期の事業者でも利用できる可能性があります。担保や保証人、事業計画書などを求められないケースもあり、売上規模に明確な下限を設けていないファクタリング会社も存在します。ただし、請求債権の発生状況や売掛先の信用力によって判断されるため、事前に相談することをおすすめします。まとめファクタリングは、入金待ちの売掛金を即座に資金化し、経営のスピードを保つ有効な手段です。特に医療・介護業界のように、収益と支出のタイムラグが大きい業種では、資金繰りの柔軟性を高める方法として注目されています。手数料や契約形態の確認は必要ですが、「今ある請求権を活かして経営の安定を図る」という意味で、非常に現実的な選択肢といえるでしょう。当社のファクタリングサービスは介護・医療・歯科業界の現場を熟知したスタッフが、資金繰りのご相談から丁寧に対応いたします。まずはお気軽にご相談ください。